資産運用をもっと身近なものにしたい――クラウドポート藤田氏が起業したワケ

高利回りのリターンが期待できるのに、少額投資が可能で、株やFXと比較すると、元本割れのリスクも少ないのが、「ソーシャルレンディング」と呼ばれる金融商品だ。国内市場は急速に成長しており、新規参入事業者も相次いでいる。ソーシャルレンディングの比較サイトを運営する「クラウドポート」代表の藤田雄一郎氏は業界の今後をどう見ているのか。
藤田雄一郎(ふじた・ゆういちろう)
株式会社クラウドポート代表取締役。早稲田大学商学部卒業後、株式会社サイバーエージェントに入社。2007年、WEB構築やマーケティング支援事業をおこなう企業を創業し、2012年、上場企業に売却。2013年、大手ソーシャルレンディングサービスを立上げ、サービス開始から約2年半で80億円の資金を集めるプラットフォームに成長させた。2016年、ソーシャルレンディングの比較検討サイトを運営する株式会社クラウドポートを共同設立した。

銀行の審査は硬直的になっている

――ソーシャルレンディングに関わることになったきっかけを教えてください。

藤田:私は、新卒で入社した会社を2年で退職し、2007年に友人と3人でweb制作の会社を立ち上げました。約6年間経営に携わり、2013年にご縁のあった上場企業に売却しました。web制作事業は当時でも既に飽和状態となっており、事業の成長が思うように進まず、とても歯がゆい思いをしていました。後から創業した新卒同期のスマホゲームの会社が時流に乗り、一気に成長していく姿を横目で見ながら、同じような境遇で社会人としての基礎を積んだはずなのに、なぜこんなに差がつくのだろうと愕然としたことを覚えています。

いろいろ考えた結果、一番の違いは、事業マーケットの選定と参入のタイミングだという結論にたどり着きました。もちろん、「誰がやるか」はとても大事な要素だけど、事業を成長させるという観点で見た時には、「何をやるのか」が最も重要なのではないかと思うようになりました。たとえばマーク・ザッカーバーグが、フェイスブックじゃなくてラーメン店を経営していたら、今ほどの規模の企業になっていなかったと思うんです。だから、「何をやる」のかについて、ずっと慎重にリサーチをしていました。

それで2013年ごろ。海外でクラウドファウンディングとか、P2Pレンディング(投資家と借り手をつなげるサービス)が、すごく伸びているという話を聞きました。そのときにたまたま縁あって、証券会社をM&Aしてソーシャルレンディングを国内展開する予定の会社役員から「マーケティングの担当者がいないので、うちで一緒に働かないか?」と声がかかったんです。

渡りに船じゃないけど、「それはぜひ!」と思い、その会社に参画を決意。ソーシャルレンディングサービスの立ち上げを経験しました。ゼロから立ち上げて起動に乗せるまで、約3年ほど事業責任者として運営に携わりました。事業は順調に拡大し、3年弱で約80億円もの資金が集まるプラットフォームに成長しました。

株式会社クラウドポート・藤田雄一郎代表取締役

――すごい!当時の投資先は何がメインだったんですか?

藤田:不動産や太陽光発電、売掛債権など、様々なものが投資対象となりました。とにかくスケール感がすごく、刻々と成長している手ごたえがリアルにありました。常に上りのエスカレーターに乗ってる感じというか。「これが成長産業というものなんだ」と、日々震えていたのを覚えています。

――なぜそこまで伸びたのか、理由をどう分析していますか?

藤田:まず投資家からが強いニーズがあったことです。銀行預金でほとんど利息が付かない中で、平均4〜5%の利率で安定的に着実に運用できる金融商品って、普通に考えて魅力的ですよね。最初はあやしみながら少額で運用する人がほとんどですけど(苦笑)。一度リターンがあると、どんどん再投資してお金を増やしていく。

一方、事業者側のニーズはというと、これも大きい。昨今の銀行はリスクを恐れて非常に厳しい融資審査をしているので、世の中に数限りなくある資金需要を網羅しきれていません。たとえば、創業したばかりのベンチャーが銀行からお金を借りるのは、至難の業です。プロジェクトベースで見ても、短期案件とか海外案件とかは、銀行からの融資が下りにくい。

そういったニーズに応えられるのが、ソーシャルレンディングです。投資者側だけではなく、資金事業者側にも大きなニーズがあることがわかり、ものすごいポテンシャルを感じました。

――クラウドポート設立の理由を教えてください。

藤田:ソーシャルレンディングの事業者数が右肩上がりの中で、投資家から「いろいろあるけれど、どこに投資したらいいのかわからない」といった声を聞くことが多くなりました。だから、比較・検討に役立つサイトを作ったらニーズがあるだろうなと、前の会社にいたころから漠然と考えていました。

そんな折に、たまたま人を介して、のちの共同創業者となる柴田陽と出会ったんです。彼がスポットライトを楽天に売却して、シリコンバレーに1年間行って戻ってきたタイミングでした。彼はちょうどアメリカで、クラウドポートの原型となるようなサービスを見ていた。ALPHAFLOWというクラウドファウンディングの比較サイトです。ALPHAFLOWは、 AirbnbやDropboxを支援したベンチャーキャピタル「Yコンビネータ」から資金調達して成長している企業です。日本でも参入事業者が急増し始めたタイミングだったこともあり、日本でも需要があるだろうなと感じました。

あとは、柴田自身が今までいくつもスタートアップを経験していた「スタートアップのプロフェッショナル」ということも大きかった。私があまり強くないシステム周りについても深い見識を持っていました。私のソーシャルレンディング業界で培ったノウハウと柴田のスタートアップを成功させてきた経験を合わせたら、非常に面白くて有益なサービスを投資家に提供できるのでは、と思ったのが設立の経緯です。

「フィンテック」の追い風による手ごたえ

――なぜソーシャルレンディング事業者側ではなく、比較サイトを始めようと?

藤田:自分が事業者側にいたときの課題でもあったんですが、金融商品って自ら魅力をアピールすればするほど、あやしくなっちゃうんですよ(苦笑)。「利回り5%です!」「過去に1回もデフォルトはありません」「損した人もいません」と聞くと、めちゃくちゃあやしい感じがする。だから、そこは公平中立な立場の第三者が客観的に情報を届ける必要があるだろうと思いました。

あとはソーシャルレンディングのことを広く世に伝えるには、マスメディアは欠かせないですよね。その場合、ソーシャルレンディングの運営事業者が単独でアプローチしても、一企業の宣伝になってしまうからなかなか話を聞いてもらえない。

一方で、「ソーシャルレンディングという業界が盛り上がってきていて、市場規模も1千億円到達するような勢いなんです」と公平中立な立場から伝えることで、ニュースバリューを理解してもらいやすいメリットがあります。

各社が単独で頑張っても、市場拡大は難しいかもしれないけれど、第三者的にこの業界を俯瞰して、その魅力を伝えられる会社があれば、市場の成長速度を早めることができると思いました。

――クラウドポートのビジネスモデルは?

株式会社クラウドポート・藤田雄一郎代表取締役

藤田:現段階ではアフィリエイト報酬がメインです。当社のサイトから各社のページに飛んで、そこで口座開設をしたら、われわれにフィーが入る仕組み。最近はアクティブに運用している国内ソーシャルレンディング投資家のうち、実に6割の方が1カ月に1回程度クラウドポートのサービスをご利用いただく状況が作れています。

あとは、各事業者の口座を連携させて投資金額やデポジット金額などの情報を一括管理できる「マイ投資レポート」というポートフォリオ管理機能をスタートさせました。これは当社だけのオリジナル機能です。

――ソーシャルレンディングが投資家に注目されている理由は何だと思いますか?

藤田:1万円程度の少額から投資ができること、また手間がかからない点も魅力です。年利回りが平均5〜6%もあるのに、この三年間は業界全体で貸し倒れが1件も発生していません。長期保有にも向いている金融商品です。投資経験者でも初心者でも、ほぼ同じパフォーマンスをあげられるのも特徴です。ただ当然リスクもあります。ファンドを運営する事業者のほとんどがベンチャー企業なので、倒産リスクがあります。

しかし、それは分散投資することでリスクヘッジすることが可能です。そもそもクラウドポートが運営するサービスの根本理念は、ソーシャルレンディングで、投資家が分散投資しやすくするためのツールやサービスを提供すること。コツコツ貯めて増やしていっても、事業者や借り手企業が倒産してしまい、これまで積み上げてきたものを失っては意味ないですよね。

だからソーシャルレンディングをはじめるにあたっては、一つの会社や一つのファンドに集中投資するのではなく、いろいろなファンドに分散投資してリスク回避を図ってほしい。そのためにクラウドポートのような比較・検討と資産管理が一括でできるサイトがあれば、心おきなく分散投資ができるのではないかと思うんです。

株式会社クラウドポート・藤田雄一郎代表取締役

――日本でもクラウドファンディングという言葉は浸透しつつあります。だけど、まだ現状では、「私の映画製作にカンパお願いします!」みたいなケースが、クラウドファンディングだと思っている人も多いですよね。

藤田:クラウドファンディングは、2種類あります。「映画を作りたいので投資お願いします。お礼にエンドロールにクレジットを入れます」のように、金銭的リターンのないものを購入型クラウドファンディングといいます。「クラウドファンディング」と聞いて一般の方が想起されるのはこちらのタイプなのではないでしょうか。商品性がユニークだし、仕組みがわかりやすいので情報が拡散しやすい。しかし、市場規模そのものは大きくありません。

実際は、貸付型クラウドファンディングと言われる、集めた資金で融資を行い、金銭的なリターンが発生するタイプのクラウドファンディングのほうが市場規模は大きいのです。貸付型クラウドファンディングのことを国内では「ソーシャルレンディング」とも呼びます。

ただ貸付型クラウドファンディングは、貸金業法による債権者保護の観点から、エンドの資金需要者の情報を開示できない。だから投資家にとって、自分のお金がどこにたどり着いたのかがわかりにくいし、マーケティング的にもPRしにくい。だからいま一つ認知度が低くかった。

しかし、この数年で「フィンテック」という追い風があって、そのおかげで貸付型クラウドファンディングやソーシャルレンディングというワードが、ジワジワと浸透してきている手ごたえがあります。

「新しい産業を作っていく」という気概を持っている人と働きたい

――今後の課題はなんですか?

藤田:クラウドポートを柴田と立ち上げたのが2016年11月で、サービスを正式ローンチしたのは2017年2月です。約10カ月経ちましたが、業界内でのプレゼンスはある程度確立しつつあると思っています。おそらく投資型クラウドファンディングをされている人は、比較検討や業界分析など、何かしらのかたちでクラウドポートにアクセスされていると思います。実力のあるメンバーが揃っている自負はありますが、まだまだジョインしてくれる人がほしい。それが課題です。

――どんな人にジョインしてほしいですか?

藤田:スタートアップ事業なので、当然、即戦力になる人です。専門性を有しているかどうかが大きいですが、指示待ちではなく自律的に動けるかどうか、自分の役割を自分で考えて行動に移せるかどうかも重要だと思っています。

私自身は、素直な人や気遣いができる人が好きなので、そういう人と働きたい気持ちが強いです。あとはやっぱり、「新しい産業を作っていく」という気概を持っている人が良い。具体的な職種としてはエンジニア、そして業務管理の責任者になれる人を探しています。

――今後どういう会社にしていきたいかイメージはありますか?

藤田:今はクラウドファンディング・ソーシャルレンディング領域に特化していることもあり、まずはより多くの人にこの仕組みを知ってもらい、利用してもらうことで、市場拡大に貢献できればと思っています。さらにその先は、一般個人の投資マインドに影響を与えられる会社になれたらいいなと思っています。ずっと考えていることですが、資産運用をもっと身近なものにしたいと考えています。

私は今37歳ですけど、自分が70歳になったとき、今の高齢者と同程度の年金がもらえるとは、どう考えても思えません。サラリーマンの平均年収もどんどん下がっている中で、普通の個人が将来に備えた資産運用を今からしておくことは重要なことだと思います。

ただ現状では、選択肢が少ない。株やFXも魅力的ですが、知識や初期投資資金がそれなりに必要だし、元本割れリスクもあります。逆にリスクの少ない国債や定期預金では、ほとんど金利が期待できない。この状況って、ちょっと極端ですよね。

その中間ぐらいに位置付けられる金融商品が浸透すれば、資産運用を前向きに考える人も増えて、未来がちょっと明るくなるかもしれない。その一助となる会社に成長できたら、社会的なバリューがあると思います。

カメラマン: きくちよしみ、 ライター: 今井順梨
株式会社クラウドポートに興味をもった、
・ファンド管理兼経理Mgr・メディア編集者・オンラインマーケティング担当・ソフトウェアエンジニア・フロントエンドエンジニア・ビジネスディベロップメントに興味をお持ちの方はこちらから 今すぐエントリー

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