「2017年はお金がテーマの年になると思っていた」
バンク光本氏とクラウドポート柴田氏が語る起業論

ファッションアイテムなどを撮影するとすぐに査定して現金化できるアプリ「CASH」を運営するバンクが、70億円でDMM.comの子会社になったというニュースは大きな話題になった。その発表の約10日前、KNOCK編集部では、バンク代表の光本勇介氏とソーシャルレンディング比較サイト「クラウドポート」共同創業者の柴田陽氏の対談を企画・取材していた。一緒に旅行するほどの仲の2人が「お金」をテーマに2017年それぞれサービスをローンチした。どんな思いがあったのか。
柴田陽(しばた・よう)
株式会社クラウドポート共同創業者。東京大学経済学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに。店舗集客サービス「スマポ」を展開する株式会社スポットライト、バーコード価格比較アプリ「ショッピッ!」、タクシー配車アプリ「日本交通タクシー配車」「全国タクシー配車」などを手掛け、3つの会社を創業・売却した経験を持つシリアルアントレプレナー。
光本勇介(みつもと・ゆうすけ)
株式会社バンク代表取締役。2008年10月にSTORES.jpを運営するブラケットを創業。2013年8月にZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイへ売却する。2016年10月にスタートトゥデイ社よりMBO実施、ブラケット社の取締役会長に就任。2017年2月に株式会社バンクを創業し、代表取締役に就任。

2017年はお金の年になると思った

光本:クラウドポートって、いつサービスをリリースしたんでしたっけ?

柴田:会社を作ったのが2016年の11月で、サービスインは2017年2月です。

光本:すごい良いタイミング!

柴田:そうですね。リリースの3カ月後くらいから、日経新聞や週刊誌に週1回は取り上げられる感じになりました。リリース当初は、メディアにアプローチしても「ちょっと早いんじゃないか?」という対応をされることも多かったんですけど、タイミングってあるんですよね。アイデア探しも、事業作りも、市場選択とタイミングが最も重要だと思っています。

スタートアップである以上、急成長しないと意味がなくて、いくら面白いサービスでも、市場選択を間違うと広がっていかない。タイミングの観点で言うと、どんなにイケてるサービスでも、時期が早すぎたり、遅すぎたりすると流行らないということはよくある。そんな中で、僕は「2017年はお金の年になる」と思ったんです。

光本勇介・株式会社バンク代表取締役、柴田陽・株式会社クラウドポート共同創業者(右)

ソーシャルレンディングって少し前まで、消費者の理解もなければ、認知もされていなかったし、逆に「怖い」「胡散くさい」というイメージがあったと思います。でも、それは、日本の消費者の知識が少なかったから。ただ最近は「お金」関連でも、今までにないイノベーティブなサービスが出てきています。

それで消費者側も「お金」に関するウェブサービスに一気に慣れてきた。それが2017年という年だという気がしています。だから、光本さんが今このタイミングで「お金」をテーマにして、サービスインしていたのは、流石だと思います。

――テーマを「お金」にした狙いはなんですか?

柴田:インターネットが身の回りのことをどんどん飲み込んでいくプロセスに、すべての世代の人が巻き込まれています。eコマースから始まって、なんでもかんでもインターネット化されていくプロセスの中というか。「お金」というコンサバティブな領域も、インターネットに吸い込まれている。今は、ちょうどその境目のタイミングにあると思うんです。言語化がとても難しいんですけど。

ビジネスの基本は、課題を解決すること

――「お金以外」でも、柴田さんならテーマ設定はいくらでもできたのではないかと思います。

柴田:青臭いようですが、僕はビジネスは世の中の課題を解決する手段だと思っています。すなわち、ビジネスは、課題と解決策の組み合わせです。「どの課題を選ぶか」と「どうやって解決するか」のチョイス。ビジネスプランを作るのは、その組み合わせを選んでいるに過ぎないと思っています。

どういう組み合わせがいいのかというと、新しい課題と既存の解決策の組み合わせか、既存の課題と新しい解決策の組み合わせ。これはマクロでもミクロでも、どのレベルでも当てはまる話です。

たとえば、ソーシャルレンディングだったら、新規参入の事業者が相次いでおり、20社以上にも増えてきています。だから投資家にとってみたら、どのサービスを選んだらいいかわからないし、そのための情報も少ない。これってまさに、新しい課題なんです。2年前だったらありえない話です。なぜなら2年前は、事業者が5社ぐらいしかなかったから。投資家は、5社のウェブサイトを巡回すればよかったけど、今は30社ぐらいあるので、すべて見て回るわけにもいかない。だから1つメタな、情報を整理するためのレイヤーのサービスが必要になる。そういう発想からきているので、小さいか大きいかは別にして「これはアリだろう」と思って、クラウドポートが生まれたんです。

光本:世の中の人たちって、どんどん「ぐうたら」になってきていると思います。世の中が便利になり過ぎたせいで、もはや頭をフルに使わなくても生きていけるから。「知識がない→ググればいい」「わかんない→ググればいい」「迷った→ググればいい」(笑)。別にグーグルだけじゃなくて、いろいろなアプリやソリューション、サービスがあるけど、とにかくすべてにおいて、頭を使わなくても生きられるようになった。

その観点で言うと、既存のサービスでも、どれだけユーザーが頭を使わないで済むかを考えて、焼き直すだけでも市場を奪える気がする(笑)。それに今の柴田さんの話も、ちょっと似ている気がします。クラウドファンディングの事業者が5社しかないとギリギリ巡回できる。だけど、30社もあったら頭を使わないと運用できない。だから「面倒くさいからこのサイトにお任せ」というソリューションが必要になってくる。

僕たちの発想も同じです。モノを売る手段はたくさんありますが、基本的に頭を使わなきゃいけない。フリマアプリで売るのだって、写真をどう撮ったら売れるか、どんな文章を書けば高く売れるかと、基本的に頭を使う必要があります。さらに、相手の質問に対してどう返信しようかとか、値段交渉されたけどこれでまとまるかとか、とにかく面倒くさい。でも、CASHはモノの写真を撮影すればすぐに査定金額がわかるので、頭を使わなくていいんです。

ゼロからイチを生み出したかった

光本勇介・株式会社バンク代表取締役、柴田陽・株式会社クラウドポート共同創業者(右)

――柴田さんから、光本さんへの質問はありますか?

柴田:光本さんがSTORES.jpをスタートトゥデイに売却・MBOしたうえでバンクを創業したのは、どのような考えがあったんですか?

光本:STORES.jpに対しては愛もありますし、おかげさまで伸びていたのですが、今日明日でいきなり爆発するというよりはコツコツ育てていく、ストック型のビジネスなんですね。僕は、ゼロからイチを作るほうが好きですし、それが得意なほうだと思っています。だからせっかくスタートトゥデイを卒業したタイミングでもあったし、イチから百に持っていくほうが性に合っていたので、新しい事業にチャレンジしてみようかなと思いました。

――それがCASHにつながったのは、どういう理由ですか?

光本:世の中には潜在的に、少額資金の需要があると思ったんです。ただ、その資金ニーズを満たすために何かモノを売ったりとか、お金を借りたりとかするのは、面倒くさいですよね。それに疲れる。だからその工程数とストレスを極限まで最小化したいと思ったんです。結果的にできたサービスが瞬間的に物を買い取るCASHだったんです。

――柴田さんにはCASHのアイデアについて、事前に相談されていましたか?

光本:柴田さんにはアイデアが出る前の段階、いろいろ勉強しているタイミングから相談していました。柴田さんとはオフィスが近所だったのもあって、よくお茶していたんです。お互いいろんな業界を見てきたから「この業界面白いと思うんだよね」とか「今この業界見てるんだよね」とか、そんな話をずっとしていました。

柴田:なんで、僕らはまったく別の会社を作るのが好きなんだろね。メンバーの採用もしなくちゃいけないし、大変じゃないですか?

光本:新しいものを作るのが好きなのかな。だってなんか、既存のチームと既存の会社で新しい事業を作るのって、チートしているようにも感じてしまうじゃないですか。ありがたいことに、いろいろな経験をさせてもらってきて、スタートトゥデイにいた期間も良い経験になったし、成長もできた。そんな中で、より成長した自分の力試しをしたいと思った。そういう意味で言うと、組織のパワーや資本、人の既存リソースと使うよりは、ゼロからどれだけできるかを試してみたかったのかな。柴田さんはそのあたりどうですか?

光本勇介・株式会社バンク代表取締役、柴田陽・株式会社クラウドポート共同創業者(右)

柴田:僕はサービスを先に考えて、必要なリソースを自分で集めるのが性に合っています。そうじゃないと、結局、僕についてくる属人的な組織になっちゃう。それは嫌なんです。あまりそういうかたちで人に頼られるのが好きじゃない。「一緒にこのプロジェクトをやりたい」って来てくれるなら大歓迎だけど、「ずっと憧れていたので一緒に働きたいです」と言われると気持ち悪い。内心はちょっと嬉しいけど。

光本:やりたいことに共感してくれる人のほうがいいですよね。「憧れています。弟子にしてください。一生ついていきます」みたいなのは嬉しいけど、僕もやっぱり嫌です(笑)。僕と一緒に働きたいからではなくて、「このサービスに可能性を感じるから」「このミッションに共感するから」という理由で来てほしい。

それに属人的な会社は限界があるから、あまり伸びないんじゃないかなと個人的には思っています。最初は良くても、メンバーが増えて30人、50人になってくると、誰かしら「昔よりも、社長との距離が遠い」と言い出す。そんなの初めからわかっているだろうと(笑)。

スタートアップで得られる経験量は大企業の◯倍

――柴田さんから見て、光本さんはどんな人ですか?

柴田:光本さんはオシャレで、こだわりが強い。だって、家とかオフィスとかもすごくこだわっているから。最近のスタートアップのオフィスって、みんなブラケットのオフィスを真似していると思いますよ。とにかく光本さんはセンスが良い。

光本:柴田さんは生き急いでいる感じがする(笑)。一緒に旅行していても、あらゆるものを最適化したがる。無駄なものを削ぎ落としてシンプルにしようとしたりとか、改善しようとしたりとか。これは、ビジネスではメチャクチャ重要なことですよね。一緒に仕事をしたことがないのでわからないですけど、あらゆる工程を削減したり、最適化しているのが、仕事の面にも反映されているだろうなと、話していてわかります。

柴田:だって、たとえば移動のタクシーの中で何もしないのとか、耐えられない。

光本:柴田さんは、タクシーの手配一つとっても、停車場所を細かく指定するんです。そういうことが1日に何度もある。こういう話をすると、「わがままな人」のように聞こえるかもしれないけど、決して悪いわけではありません。時間を有効活用しているからです。あらゆるものを最適化するのは、すごく大事なことです。ビジネスにおいてはなおさらですよ。そういう最適化マインドを常に持ち、体現しているところが、柴田さんの素晴らしいところだと思います。

――柴田さんは、どんな人と一緒に働きたいですか?

柴田:良い意味で「せっかちな人」と働きたいですね。僕がせっかちな性格というのもあるんですけど。スタートアップは「ドッグイヤー」という言い方がよくされます。犬の一生はだいたい15年ぐらいで、その間に人間の7倍もの速さで成長していく。まさにそんな感じです。

みなさんにも年をとるにつれて、どんどん体感時間が短くなっていく感覚を持ったことがあるのではないかと思います。小学生のときの1年間ってすごく濃く長く感じたと思うけど、社会人になってからの1年間ってあっさりとあっという間に経ってしまいますよね?なぜ歳をとると時間が短く感じるかというと、その1年が、その人が生きてきた比率で言うと少なくなるからと言われています。10歳にとっての1年は、生きた時間の10分の1だけど、30歳だと30分の1になるということです。

これって会社にも当てはまると思っていて、会社も創業2年目の1年間は1年目の2倍の速さで過ぎます。3年目は2年目の1.5倍の速さで過ぎます。早ければ速いほど、目まぐるしく変わるし、濃く充実した時間を体験できる。だから、スタートアップに加わるのは、早ければ早いほどオトクなんですよ。変化が激しいし、新しく体験することも多いし、より濃い1年が過ごせるから。

早く自分の力を世に証明したいとか、会社で得たことを糧にゆくゆくは起業をしたいと考えているせっかちな人は、ぜひ考えてみて欲しい。スタートアップでの1年の経験は、創業うん十年の会社での10年分の経験に匹敵すると思う。ベンチャーは立ち上げ2年目と3年目では、世界が全然違いますから。

カメラマン: きくちよしみ、 ライター: 今井順梨
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