世の中にお金を供給しまくるアプリを生み出したい
バンク光本氏が語った「CASH」の価値

株式会社バンク

創業したブラケットはスタートトゥデイに売却のちMBO。2017年2月、新たにバンクを立ち上げる。同年11月には、DMM.com.に70億円で売却――。バンク代表の光本勇介氏は世に驚きと話題を与えている。アイテム現金化アプリ「CASH」を運営するバンクは、今後も光本氏が率いていく。買収発表10日前、光本氏が語った「CASH」の価値とは――。
光本勇介(みつもと・ゆうすけ)
株式会社バンク代表取締役。2008年10月にSTORES.jpを運営するブラケットを創業。2013年8月にZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイへ売却する。2016年10月にスタートトゥデイ社よりMBO実施、ブラケット社の取締役会長に就任。2017年2月に株式会社バンクを創業し、代表取締役に就任。

高校生のころから、5000円で仕入れたTシャツを2万で転売していた

――光本さんは、学生時代をどう過ごしていたんですか?

光本:自分でビジネスをすることにすごく興味がありました。大学時代はサークルにも所属せずに、インターネットでいろいろな仕組みを作って、小遣いを稼いだりしていました。今から考えると、ままごとみたいなものなんですけど、当時からネットビジネスをしていたんです。

光本勇介・株式会社バンク代表取締役

――具体的に、どんなことをしてたんですか?

光本:高校生のときからやっていたのは、東京でしか買えない服などを仕入れて、地方在住の人に売ることです。まだネットオークションも普及していない時代だったから、BBSに書き込んで売っていました。

たとえば、木村拓哉がドラマでTシャツを着ていたら、翌朝にはショップに並んで買って、転売していました。個人バイヤーの先駆けですね。当時はネット通販も充実してなかったから、5000円で買ったTシャツが1万5000円とか2万円とか、ビックリする価格で売れたんです。そのときに「安く仕入れて、高く売るってビジネスの基本だし、面白いな」と感じました。

だけど、やがて競合が出てきました。そうすると、なかなか売れなくなってくる。だから、次に手掛けたのは、海外ネットオークションでアートポスターやフィギュアを仕入れて国内に向けて売ることです。これもすぐに競合が出て売れなくなりましたけどね。

――その次に手掛けたのは?

光本:個人でホームページをつくって、「翻訳、承ります」と掲げたんです。あたかも翻訳会社のような体裁にして、翻訳業務を請け負いました。1999年ごろだったと思います。今ならほとんどの企業がホームページを持っていますけど、当時はあまり充実していなかったので、「翻訳」で検索すると、僕のページが上位にあがった。それで、大企業からびっくりするような規模の翻訳依頼がきました。

その仕事を10〜15に分けて、会ったこともない全国の翻訳者にお願いする。それで、戻ってきたものを自分でチェックして、納品する。今でいうところのクラウドソーシングですね。

――それがITビジネスに興味を持ったきっかけですか?

光本:はい。それなりに稼げたので、ビジネスの面白さも感じていました。だから、「大学を卒業したらすぐ起業しよう」と考えていました。ちょうど僕が大学3、4年ぐらいのころは、サイバーエージェントやライブドアが世に出てきたネットベンチャー創成期でした。

――ITバブルのころですか?

光本:まさにそうです。当時の僕は、いろいろなネットベンチャーの経営者の集まりに顔を出させていただく機会に恵まれていました。だから、すごくイキがって「卒業したら起業しようと思っています」とあちこちで言っていたんです。

でも、ある上場企業の社長さんとランチしたとき、彼に次のようなことを言われました。「卒業してすぐに起業するのは、あらゆるものをショートカットできて良いと思う。ただ会社である以上は、お金を稼いでいかなければならない。お金を稼ぐってことは誰かからお金をいただかなくてはならない。そのためには、いろいろな企業と付き合う必要がある。その企業の中身を知っているのといないのでは、今後が全然変わってくるよ」

それを聞いて「たしかにそうかも」と思いました。なぜなら、自分なりにビジネスはしてきたけれど、企業との取引の場における話し方や取引の作法もわからないし、そもそも何が正解かもわからなかったから。だから、その人の言葉がすごく響いた。それでまずは就職することにしたんです。

預金が2万円くらいになった時期も

――どんな会社に就職したんですか?

光本:僕は欲張りな人間なので、1つの場所で、複数のビジネスが見られる仕事がしたかった。そこで思いついたのが広告会社でした。広告会社には、ドメスティックな企業と外資系企業があります。ドメスティックな企業は、メディアを売るのがメインの仕事。そうなると、いろいろな会社の中身を見る機会が限られてしまう。一方、外資系はメディアを売っていないから、クライアントのマーケティング業務にニュートラルなかたちで関われる機会が多いのではないかと思ったんです。それで、アメリカ資本の広告会社に入って、4年間くらい働きました。

光本勇介・株式会社バンク代表取締役

――STORES.jpのアイデアは、広告会社時代から考えていたもの?

光本:いえ、あれはブラケットの5番目のサービスなんです。最初のサービスは、個人間のカーシェアリングサービス。今でこそ普及していますが、僕がサービスを考えたのは、今から9年前です。だからなのか、「アタマおかしい」とか「自分の車を人に貸すなんてありえない」とかさんざん言われて・・・結局広がらなかった。

――9年も前に!何がきっかけで思いついたんですか?

光本:広告会社にいたころ、ちょうどリーマンショックのタイミングで、ある海外の自動車メーカーを担当していました。さすがに売れ行きが伸び悩んでしまっていたんですが、車に関係するデータを見ていると、レンタカーの需要が高まっていることがわかりました。

自家用車だけでも、日本国内に6000万台くらいあるのに、1日の約97%の時間、動かされず、駐車場に停めたままになっていました。「車が普及しているのに稼働されないままっていうのはどれだけ無駄なんだろう」「これではもったいない」と思った。同時に、レンタカー市場は右肩上がりだったから、使われていない車を借りたい人と共有する仕組みを作ったら、車を借りる市場が新たに作れるんじゃないかと思ったんです。

そのあとは、モデル志望とモデルを募集する企業のマッチングのプラットフォームとか、靴をカスタマイズしてオーダーメイドできるECとか、そんなことをしてました。

――ほしい・やりたい人、売りたい・貸したい人とのマッチングがコンセプトなのは、STORES.jpに通じるところがありますね。

光本:僕が興味があるのは「新しい仕組みを作ること」です。この新しい仕組みは、既存サービスの真似だと成り立たないんですよね。その当時、個人間のカーシェアリングや、モデル志望と企業をマッチングする仕組みは、ネット上になかった。STORES.jpも、「商品を売るなら自前でサイトを作る必要がある。個人でオンラインストアが持てる市場は広がっていくだろう」と思って始めました。会社が軌道に乗るまでに5年くらいはかかりましたけど。

――一番ハードな時期の思い出は?

光本:預金が2万円くらいしかなくなったことです。そのときの通帳の画像は、今でも持ち歩いています。気が引き締まるので。

――シャレにならないですね・・・。

光本:通帳の底を見るのってこういうことなんだって。まさに自転車操業でした。支払いもできなくなりかけたときは「もう潰れるなぁ」と思いましたよ。ブラケットもバンクも自己資本でやってきたので、資金調達をしたことがなかったんです。それはイコール赤字になった瞬間終わることを意味する。だから常に、いかに売上をあげるかを考えていました。

CASHのコンセプトは既存の銀行と共通している

――STORES.jpを軌道に乗せてスタートトゥデイに売却した時点で、「自分の役割は終わった」と思いませんでした?

光本:いや全然。それまでは資金繰りのことを考えなきゃいけなかったので、大きな資本の傘下に入ったことで初めて、目先のお金のことを考えずにいられる環境になったんです。そこから新しい経営の仕方や事業の伸ばし方を学びました。さらに、スタートトゥデイにジョインしてから3年間でSTORES.jpの事業規模も10倍ぐらい成長した。やることはたくさんありましたし、そもそも自分が作ったサービスですから、それをいかに大きくするかにも興味がありました。

――そこからMBOして、さらにバンクを創業したわけですね。

光本:スタートトゥデイにジョインしてから約3年間、すごく自由にやらせてもらえたんです。でも、1人の起業家として、新しいチャレンジをしてみたい欲が出てきた。それで、前澤友作さん(スタートトゥデイ代表)に「新しいチャレンジをしたい」と相談した際、「STORES.jpを今後どうやって運営していくのが一番いいと思う?」と聞かれたんです。

「このまま僕たちがやるのが一番うまくはいくとは思います」と答えたところ、前澤さんに「だったら、光本さんが持って行けばいいじゃない」と言われました。僕が購入できる金額を提示していただいたので、再度買い取らせていただきました。STORES.jpって、今日明日でいきなり世界が変わるというより、地道に続けてどれだけ大きくしていけるかというストック型ビジネスです。それが得意な役員がいたので、その人に経営を任せることにして、僕は新しいチャレンジを始めました。

――光本さんから見て、CASHの価値ってなんですか?

光本勇介・株式会社バンク代表取締役

光本:銀行のビジネスモデルは、その銀行にあるお金を世に供給することだったと思います。CASHもある意味で、お金を世の中にばらまく(供給)するアプリです。バンクの資金をCASHというアプリを通して、今までにはないやり方で世の中に供給していく。それが価値です。既存の銀行とコンセプトは一緒。だけど、供給方法がまったく違う。今後は、新しいかたちの「未来銀行」みたいな存在になれたらいいなと思っています。これからもお金をばらまくアプリを生み出していきたいですね。

――今はSTORES.jpにはノータッチですか?

光本:経営データは見させてもらっていますが、マネジメントには関わっていません。新規事業を作るのは簡単でないからです。フルコミットしてフルフォーカスしないと良いものは作れない。それに、前の会社をそのまま引き継ぐと、そちらの事業にも目がいって、意識とリソースが分断されてしまうんです。

センスを見て採用している

――CASHがバズったときの心境を教えてください。

光本:あのときは、いろいろな気持ちが入り混じっていました。一番は「これはヤバい」という感情。まずはお金がバンバン出ていったので、すごくヤバいなと。でも、想像以上に話題にしていただけたのは、メチャクチャありがたいことですよね。最高に刺激的でした。だから、アドレナリンもめっちゃ出ましたし、「最高だな」いう感覚もありました。

あと、モノがいっぱい送られてきたことは、世の中の見ず知らずの人が、僕たちのことを話題にしてくれた証拠ですよね。こんな状況は作りたくても作れないだろうと思った瞬間、戸惑いもありましたけど、「とにかく、これはいい意味でも悪い意味でもヤバい」と思いました。

――ところで、人のどんな点を見て採用を決めますか?

光本:センスがあるかどうかです。こういうことを言うと、ハードルが上がって、応募してくれる人が減る気もするんですけど。ただ、センスにはいろいろな角度があって、事業作りのセンスやデザインのセンス、仕事の進め方のセンスもあります。抽象的でなかなか数値化しにくいものですが、僕が一番見るのはセンスです。

――ご自身はそのセンスを、どう鍛えてきましたか?

光本:感度の高い人たちは、何かしらネットで発信しているので、ブログとかを読みあさって、アメリカなど海外で流行っているサービスやトレンドにアンテナを張るようにしていました。意識的に努力して、いろいろな情報を入手することは昔からしてきたと思います。今でも、センスがあるなと思う人のSNSはフォローして、チェックしています。こういうことを言うと、また採用のハードルが高い会社だと思われてしまうかもしれないけれど。

カメラマン: きくちよしみ、 ライター: 今井順梨
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