合コンでモテるサービスをつくりたい
DMMによる買収発表前に聞いた「CASH」誕生の秘話

株式会社バンク

「DMM.comが70億円でバンクを買収」。こんなニュースが11月中旬、ネット業界を駆けめぐった。バンクは、アイテム現金化アプリ「CASH」を運営するなど、注目を集めていた企業。KNOCKS編集部は、DMM.comによる買収発表の約10日前、クラウドポート共同創業者・柴田陽氏との対談を通して、「CASH」誕生までのいきさつと思いをバンク代表・光本勇介氏に聞いていた。
光本勇介(みつもと・ゆうすけ)
株式会社バンク代表取締役。2008年10月にSTORES.jpを運営するブラケットを創業。2013年8月にZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイへ売却する。2016年10月にスタートトゥデイ社よりMBO実施、ブラケット社の取締役会長に就任。2017年2月に株式会社バンクを創業し、代表取締役に就任。
柴田陽(しばた・よう)
株式会社クラウドポート共同創業者。東京大学経済学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに。店舗集客サービス「スマポ」を展開する株式会社スポットライト、バーコード価格比較アプリ「ショッピッ!」、タクシー配車アプリ「日本交通タクシー配車」「全国タクシー配車」などを手掛け、3つの会社を創業・売却した経験を持つシリアルアントレプレナー。

1万個の荷物を受け取るのに1万回ハンコを押した

――CASHは2017年6月のリリース直後に休止して、8月に再開しました。

光本:6月28日のリリース当日にサービスを止めぜる得なくなりました。理由は2つあります。1つは、予想以上にお金が出すぎたこと。もう1つは、予想以上に荷物が集まりすぎたことです。6人しかいない会社なので、まず物量的にハンドルしきれませんでした。16時間くらいの間に1万個のアイテムが送られてきたんです。

トラック1台に荷物約500個なので、20台くらい来ました(笑)。500個さばくのも本当に大変でした。しかも、事業者契約ではなく、通常受け取りです。1万個の荷物を受け取るのに1万回ハンコを押しましたよ(笑)。

お金も無尽蔵に出ていく仕組みだったので、それをどうコントロールするのか。送られてくる荷物をどうハンドルするか。これらの問題を解決しない限り、再開できないということで休止しました。ただ同時に、僕たちが思っていた以上に需要があると感じられたので、「再開しないともったいないな」と思いました。この2つを解決できる仕組みを整えて、再開までこぎつけました。

――現在はどんな感じですか?

光本:おかげさまでこの2つは、ちゃんとコントロールできるようになりました。今は非常に落ち着いていて、心豊かです(笑)。休止中の数週間は、もう何も考えられなかったですね。お金はいくらでも出ていくし。「自分のお金じゃ絶対間に合わないしどうしよう。再開したら荷物も死ぬほど送られてくるし・・・」と、頭を使える状況ではなかったです。

柴田陽・株式会社クラウドポート共同創業者(左)、光本勇介・株式会社バンク代表取締役

柴田:結局、何カ月で再開したんですか?

光本:2カ月です。

柴田:すごい。2カ月でちゃんとオペレーションまで組んで、リスタートできるというのがすごい。アイデアだけで勝負する起業家だと、それは無理ですよね。

光本:心が折れそうになりましたけどね(苦笑)。

柴田:CASHを始めるにあたって、事業のアイデアはどれくらいあったんですか?

光本:めちゃめちゃありました。僕は、アイデアは何でもいいんです。どの業界でも、全部に興味を持っちゃうんですよね。ギリギリまで考えたのは、2、3つで、そのうちの1つがCASHでした。

柴田:それぞれ似てるんですか?

光本:全然似てません。医療とか不動産とか。いろいろ考えていました。

合コンでモテるサービスを作りたかった

――3つのうちからCASHを選んだ理由は何ですか?

光本:個人的に一番興味を持てて、市場としてのポテンシャルを感じられたのがCASHだったんです。あと、僕はどのテーマでも「課題を解決するんだったらこういうサービスにしよう」という妄想をするのですが、CASHが一番解像度高く、サービスをイメージできたというのもあるかもしれないですね。

――どんなサービスに興味があるんですか?

光本:僕が興味を持っているのは、マスのサービスを作ることです。ちょっとふざけて聞こえるかもしれないですけど、うちの会社は若い男性が多いので、僕はよく「合コンでモテるサービスをつくろうぜ」と言うんです。

合コンでは、それぞれが自己紹介する。そのときに「僕はLINEを作ってます」とか「僕はクックパッド作っています」とか「僕はアメブロ作っています」と言えば、女性も絶対に知ってるわけですよね。LINEを使って、アメブロを見て、クックパッドを知っているから。

女の子のほうは「私にとってなくてはならないLINEを作ってるなんて、キャー!すごい!」ってなるわけじゃないですか(笑)。「キャー!」ってなるのは、その存在を知られているからで、つまりマスのサービスですよね。

一方、STORES.jpとかCASHは、ネット業界の人には知っていただける機会が増えてきているけど、まだまだ一般の女子大生なんかには浸透していない。だから、うちのメンバーは合コンではモテないんです(笑)。

――なるほど・・・。

柴田陽・株式会社クラウドポート共同創業者(左)、光本勇介・株式会社バンク代表取締役

光本:自分たちの作っているサービスを合コンで紹介したら「キャー!」って言われるのは、マスのサービスになっている証拠です。マスのサービスになっているということは、一つの市場ができているはずです。そこに経済が生まれて、お金が集ってきて、世の中の多くの人にとって、なくてはならない存在になっている。

一生のうちで、マスのサービスを作れる機会なんて、1回、2回あるかないかくらいだと思います。だから、1回くらい、自分の手でマスのサービスを作ってみたい。そこにしか興味がないです。なのでテーマを考えるときは、「マスにできるポテンシャルがあるか」を考えます。そんな中で、少額資金ニーズや不用品を売りたいというニーズは、すでに巨大化していた。そこで、どれだけ最適化して新しい事業としてパッケージできるか、みたいなことを考えていた感じです。

柴田:マクロのニーズをとらえて、仮説を解像度高く持つことができるのが、光本さんは起業家としてすごいところだ思います。

光本:いや、僕はちょっと粗いんですよ。柴田さんとはお互いのツボは似ていると思うんだけど、見方や考え方が違うような気がする。だけど、同じテーマで考えてくれたていたり、意見を言ってくれたりとかするので、いつも気付きがあります。だから、いろいろな議論に発展する。

少額投資や資産運用ニーズは「時代の潮流」に

柴田:僕の哲学としては、「大きなトレンドにはいくら頑張っても逆らえないので、それに対抗するのではなく、上手く使うべきだ」というのがあります。

変化の波の大きさだったり、時間軸だったりが、自分が今やりたいと思っているものごとの大きさに合っているかどうか。その軸から見てみると、やっぱり世の中にそんなにたくさん波が残っているとは思えない。だから、仮に50のアイデアがあったとしても、5つくらいに集約されていく。

一方、お金を運用する人とお金がほしい人の中には、昔ながらのトラディショナルな金融機関でないところとつながりたいというニーズがあると思う。だから、少額投資や銀行でもノンバンクでもないところで、資産運用ができるインフラが整ってきている状況は、ベンチャーにとって大きなチャンスです。

そんな機会を提供できるサービスへの期待感の大きさを見るにつけて、変化の潮目だなと思います。波乗りという言い方だと語弊があるかもしれませんが、時代が変化する流れには逆らえないので、それにうまく乗るというか。

――CASHのどのあたりがユーザーに刺さったと思いますか?

光本:初回リリース時、ユーザーがモノを送る導線と、やっぱり売りたくないユーザーに返金する導線の2つを用意していました。同じようなサービスがないので、どちらがどのくらい使われるかは想像がつかなかったんですけど、フタを開けてみたら、やっぱり圧倒的にモノを送ってくる人のほうが多かった。要するに、瞬間的にモノを現金化したいと思っている人が多かったわけです。

僕たちはちゃんとビジネスとして成り立つように設計をしていたので、「これだけニーズが高いのであれば、ここにもっと特化して、しっかりしたサービスに調整しよう」という思いが強くなっていった。再開時は、とくにそこにフォーカスしました。

世の中には、モノを売る手段がいっぱいあって、僕たちも「モノを売る需要は高い」というのはわかっていたけど、冷静に考えてみると、なんだかんだ言ってどれも面倒くさい。だから、そんな中で「このアプリ、カンタンで手軽だからいいよね」と思って使ってもらえるのであれば、そこにチャンスがあるのかなと。

面倒くさがりな人は増えていて、多くの人が誰かからの提案を足を組んで待っている。この流れは、もはや止められないと思うんですね。だから、ぐうたらな人が増えていく流れに合わせて、どうサービスを提供するか、僕たちは考えていかなくてはいけないんです。

柴田陽・株式会社クラウドポート共同創業者(左)、光本勇介・株式会社バンク代表取締役

――2人は以前から仲良しだということですが。

光本:柴田さんとは、一緒に旅行したりとか、ご飯食べに行っていたりしています。柴田さんは会社を卒業したタイミングから、すでにいろいろな業界やいろんな市場やいろんな国にアンテナを張っていたので、さすがだなと思っていました。

僕がまたブラケットにいたころから刺激をもらっていましたし、「最近、この市場が面白いと思うんだよね」とか「こういう新しいテクノロジーがあって、面白いと思うんだよね」とかいろいろな情報もらっていたので、いつも話すたびにワクワクしていました。

「あれオレ権」を持ちたくないか?

――バンクには今後どんな人にジョインしてもらいたいですか?

光本:僕は以前、広告業界にいました。その業界の中で「あれオレ」詐欺というのがあるんです。たとえば、週末に彼女とテレビを見ていて、CMが流れたときに、ドヤ顔で「あれオレ」って言うんです(笑)。要は「あれ、オレが作ったんだよ」ってことです。

だけど、たった15秒のCMでも、100人くらいが制作に関わっているんですよね。だから、「たしかに、あなたは制作に関わっているかもしれないけど、100人のうちの1人だよね。『あれオレ』って言っていいの?」ってなる。

ネット業界も同じだと思います。もちろん、その会社のエンジニアなり、デザイナーなり、サービスに関っている人は「僕、LINE作っています」とか「僕はアメブロ作っています」とか「クックパッドを作っています」と言っていいと思うんですよ。それが悪いということではない。

だけど、事業規模が大きなサービスだと、やはり数百人いるうちの1人なんですよね。逆に、僕たちはまだ創業期で、何もないに等しい。でも、そこでしか味わえない楽しさとか、ダイナミズムとか、面白さがあると思うんです。

スタートアップにはスタートアップなりの面白さがあります。その1つは「あなたがこのインフラを作らないと、このサービスはリリースされない」ということ。スタートのタイミングで関わって、仮にサービスが大きくなったら、胸を張って「あれオレ」って言える権利があるし、言っていい人たちだと思うんです。

スタート間もないフェーズで関わらないと、この先の「あれオレ権」は持てない。だから、ゼロから「あれオレ」に持っていくのに興味がある人に、ぜひ応募してもらえたらと思います。そういう人にとっては、めちゃくちゃ面白い日々が送れるのではないかと思います。

(編集後注:この対談の約10日後、BANKはDMM.comに70億円で子会社化されることが発表された。DMM.com代表取締役の片桐孝憲氏は「THE BRIDGE」のインタビューに次のように答えている。

「やはり大切なのはCASHっていうプロダクトというよりもバンクっていうチーム。僕らも同じようなプロダクトを作れるかもしれないけどやっぱりそれはコピー品。偽物ではなくやはり本物が欲しいじゃないですか」

http://thebridge.jp/2017/11/cash-running-company-bank-joined-dmm-group)

カメラマン: きくちよしみ、 ライター: 今井順梨
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