スマホゲームのように儲からないけど「美味しい」と言われたい
八面六臂・松田雅也氏が仕事に懸ける思い

八面六臂株式会社

水産物から始まり、現在では青果や精肉など、飲食店向けの食品EC事業を展開する八面六臂株式会社。現在の登録利用店は3500店舗を超え、2017年3月には総額2.4億円の資金調達を実施した。ロジスティクスや決済システムの強化なども着実に進み、順調に成長を遂げている。しかし、松田雅也代表取締役は「けっこう大変ですよ」「しんどい商売」と口にする。はたして、その真意は?そして八面六臂が提供するサービスは今後どうなるのか?
松田雅也(まつだ・まさなり)
八面六臂株式会社代表取締役。京都大学法学部卒業。2004年4月、UFJ銀行に入社。2005年10月、独立系ベンチャーキャピタル入社し、取締役パートナーを経て、2007年5月、エナジーエージェント株式会社(現八面六臂株式会社)を設立。2009年6月第2種通信事業(MVNO)を行うG-モバイル株式会社の取締役に就任し事業拡大に貢献。2010年9月同社取締役を辞任し、2011年4月から、料理人向けのEC事業「八面六臂」をスタートした。

良質なマネジメントで「いかに正確に、早く、安く」できるか

――今年3月に資金調達されてから、変わったことはありますか?

松田:特に変わったことはありません。基本的に、当社の商売は、良い食材を仕入れて、効率良く、大事なお客様の元に届けるということです。そのために、ロジスティクスやシステム開発、生産地との調整などについて、日々改善を繰り返しています。直近では、特にロジスティクスの強化に注力しています。

八面六臂株式会社・松田雅也代表取締役

――どういう面で注力しているのですか?

松田:たとえば、一般の人はトラックを運転したことも、運転させたこともほとんどないですよね?そのような仕事を3年くらい続けてみたら、当初想定していなかったようなことが次々と起きてきます。そのような中で、ドライバーたちがどんなメンタリティで仕事をしているかということに気付きました。それで、いかに効率的に運営していくか、ということを考えます。

つまるところ、私どもの商売で重要な点のひとつは、短期的にも中長期的にも、良い配送サービスをいかに安くで提供できるかです。たとえば、短期的には、ドライバーの時給を安くするという戦略もありうるでしょう。しかし、もし仮に事故が起きたら、たとえ保険をかけていても、100万単位でお金が飛んでいきます。それは中長期的にはロスです。

だから、時給を高くして、真面目で優秀なドライバー雇う戦略が必要になります。一方で、お客様のためには、コストを低く抑えないといけません。そのような状況で、一番適切なポイントはどこかを考えています。

――マネジメントの難易度が高そうですね。

松田:たとえば、ある商品を100店舗に運ばなければならないとします。トラック1台を100店舗に行かせるよりも、100台を走らせるほうが配送時間は短いですよね?でも、コストに合いません。1台を行かせるほうがコストは低く抑えられます。だけど今度は、配送時間がかかります。その結果、交通事故が起きる確率も高くなります。だから、何台でどのコースを選べばいいかを考えます。

改善していくポイントなどはたくさんあるのですが、一例として、当初、あるドライバーが「すごく大変ですよ」と話していた配送ルートがあったのですが、GPSを用いた管理ツールを導入して配送の「ログ」を調べてみたところ、実はかなり余裕があり、なかばサボりつつ、配送していることがわかりました。それで、別のドライバーに代え、システムが客観的に算出するコースを走らせることで、結果的に配送効率を大きく上げることに成功しました。このように、どこに無駄があるか、それをいかに省くかをずっと考えていくことによって、良質なマネジメントがひとつずつできあがります。

「厳しい料理人たちに教えていただいて、今がある」

――カスタマーサポートや決済システムについても注力されているそうですが、今のお話に近い部分はありますか?

松田:配送と同様に、いかに少ない人数、低いコストで同じパフォーマンスを出せるか、という観点です。たとえば、ファックスで、納品報告をする場合、1通あたり20円くらいかかります。月にすると、何十万という金額になります。本来なら、メールで送ればいいだけの話ですよね?でもこの業界にはメールで納品報告をするような習慣がなかったのです。

また、配送についても「いつ荷物が着きますか?」という問い合わせの電話を1本受けるだけで、1000円くらいコストがかかります。1本の電話を受けて、荷物について調べて、担当ドライバーの携帯に電話をかける。そのドライバーはトラックを路肩に停めて、電話に出る。

だけど、「何分後に荷物が着くのか」がわかれば、お客様は電話してこなくていいはずです。それがわかるシステムを作れば、確実に双方のオペレーションコストが下がりますよね。こちらの無駄が省けた分、コスト構造が変わって、商品が安く売れます。当社では、そのようなシステムを作って、運用しています。

そして一番重要なのが決済管理です。当社のお客様は、中小企業や個人事業主が主ですから、債権リスクも比較的高く、また請求業務や入金管理業務が煩雑になりがちです。そこで、金融機関と提携し、当社の小口債権全体を金融市場に一括売却し、資金流動化する仕組みを導入しました。これによって、新規申込時の審査や請求事務、そして入金管理のすべてが不要になり、それまで複数人で行っていた業務がほぼ自動化されました。

――ハイテクな部分とアナログな部分のかけあわせですね。

松田:流通業は、オペレーションの塊です。一つ一つはとても地味なことやっているのです。だから、いかにミスなく、効率的にやるかというのが重要で、しんどい商売なんです。スマホゲームの会社のように簡単に儲かりません。でも、地味な改善の積み重ねで、他社にはできない事業基盤が構築されていくと信じています。

――そうした厳しい中でも、松田さんがこの仕事に取り組む理由とは何ですか?

松田:たとえば、好きな女性を食事に連れて行って「美味しい」と言われたら、うれしいじゃないですか?ああいうときの感動の言葉を仕事で作っているというのは、無条件にうれしいことですよ。人の役に立っているといいましょうか。

料理人さんも大変な仕事です。朝早い、夜遅い、休みも不定期です。けれども、彼らは「終の職業」として料理人を選んだ人がほとんどなんですよね。料理人として死んでいくわけですよ。しんどい職業だけど、自分が作ったものを人に食べてもらって「美味しい」と言われるのが、人生のかけがえのない幸せなんです。僕らの仕事はそういう人たちのアシストをすることです。

お客様として料理人さんと付き合うの大変ですけど、それ以上に楽しい。僕から言わせると、料理人さんも起業家です。志があって、商売しています。厳しい人も多い。そういう厳しい人たちだからこそ、消費者はその店に行くのです。

厳しい人たちに食材を買っていただくためにサービスを磨いていったら、いずれ大衆的にも絶対に売れるようになると考えています。そして、これまで厳しい人たちに教えていただいたからこそ「当社の今」があるのです。

八面六臂株式会社・松田雅也代表取締役

IPOも海外展開も「結果的にする」と考えている

――採用活動はどのようにすすめていますか?

松田:会社にどういう人を入れたら良いかは、だいたいパターン化されてきています。その中で、当社の給与水準に合う人を採用しています。一緒に働く中で、実力をつけて最高のパフォーマンスを発揮してもらって、給与も増えたなら、僕はうれしいし、彼らもうれしいですよね。

――新卒も採用されているんですよね。

松田:そもそも新卒や中途採用という区切りはあまりないのですが、それでも新卒は重要な採用のひとつです。当社では一般的な新卒採用媒体には出稿していないのですが、そのような中、当社ホームページにしかない新卒採用情報を見つけて応募し、面接にやってくる時点でかなりの見込みがあります。

中途採用や新規採用にしても、入社した後に変えられないのは、その人のメンタリティです。だから価値観の違いのようなものをいかに採用段階で見抜き、そのような人材を採用しないようにするかが大事になります。コンサルや外資系金融など、キラキラ系の仕事を想定している人はダメですね。そういう意味で、一緒に働いてみるのは一番良い方法だと思います。新卒採用ですと、2〜3週間、現場でインターンしてもらったら、すぐにわかります。

あと、採用面談の前に、当社のホームページをどれぐらい読んでいるかどうかを重視しています。普通、面接を受ける会社のホームページくらいは見るでしょう?なぜこの会社をやっているのかとか、事業理念とか。読んでなかったら、こちらが質問しても答えられません。そういう人にはすぐに帰ってもらいます。

あと、知識やスキルを測るテストは面接でしています。たとえば、宇和島の朝締めマダイの養殖が相場いくらか。バイヤーなら「浜相場はこれくらいで、場内にきたらこれくらい」ということがわかる。バイヤーの場合、実際業務しているように面接しています。エンジニアの場合はコードを書いてもらいますよ。

――具体的に採用したい人材を挙げるとすると?

バイヤーもエンジニアもマーケティングも採用したい。管理部長候補も採用したいです。IPOの準備にも入っているので、公開準備の経験を積みたい人ですね。まだまだ難しいですが、管理部長で、600万円、700万円といった給与をもらえるようになる可能性もあるかもしれない。「同じ釜の飯を食う」という覚悟があって、かつ、この仕事が好きな人を採用したいです。

――今後、アジアなど海外へも展開されるようですが、そうした人材の拡充もありますか?

松田:特段、海外でも必要な能力は変わらないと思っています。バイヤーや販売・マーケティングといった業務ができるのが前提です。「食は万里を超える」ので、海外展開はやりますが、会社を大きくするのを目的にしているわけではありません。

IPOについてもそうです。「気づいたら結果的にしてい」くらいと考えて、ただひたする事業に集中しています。1人の料理人さんが同じ店で30年間仕事をして、結果的に認められて有名になるというのに近いと思います。

いずれにせよ、1人でも多くの方に美味しいものをお届けしていく、地道に効率を上げて利益を出し続けていく。それは5年後も20年後も変わりません。

カメラマン: きくちよしみ
八面六臂株式会社に興味をもった、
エンジニア職(WEB開発エンジニア)、エンジニア職(マークアップエンジニア、WEBデザイナー)、バイヤー職(水産物、青果、精肉など)、総合職(営業、マーケティング)、一般職(経理、営業事務)、管理職(CFO、管理部長候補)に興味をお持ちの方はこちらから 今すぐエントリー

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