「決して見栄を張らない」元とび職人
ハンズシェア代表・内山達雄氏の「上場」に向けた戦略

起業家・家入一真氏のツイッターでの呼びかけ「春の起業祭り」がきっかけとなって生まれた株式会社ハンズシェア。代表取締役の内山達雄氏は元・鳶(とび)職人という異色の経歴を持つが、どのような経緯で起業に至ったのだろうか。同社が運営する建築業者のマッチングサービス「ツクリンク」にはどのような思いが込められているのだろうか。
内山達雄(うちやま・たつお)
株式会社ハンズシェア代表取締役。大学中退後、とび職を経て、2012年にハンズシェアを共同創業。建設業における仕事の発注元と受注先をマッチングするサイト「ツクリンク」を運営している。2017年8月現在、サイトの会員数は1万6000社を超える。案件の紹介のほか、職人の求人情報も掲載しており、建設業界のスタートアップとして注目を集めている。

——内山さんは元・職人だとおうかがいしましたが、オラオラした雰囲気はありませんね。

内山:もともと人見知りなんです。今は代表ですから自分のなかでスイッチを入れているんですけど、基本的にあまり目立ちたくない性格なんです。

株式会社ハンズシェア代表取締役・内山達雄(うちやま・たつお)

——そんな人がどうして、職人の世界に飛び込んだのでしょう。

内山:高校を卒業後、大学に行くつもりだったんですが、家庭の事情ですぐに働かなければならなくなって……。それで給料の良い鳶(とび)の会社に就職しました。それまで建設業なんて、まったく頭にありませんでした。

——経済的な理由が大きかった、と。

内山:正直なところ、「大学に行った同級生には負けたくない」という思いもありました。だから、稼いでやろうと。当時は景気もよくて、20歳で年収600万円くらいもらっていました。車に凝ったり、寿司や焼き肉を食べたりといった贅沢もしました。

——結局、その会社には何年勤めたんですか?

内山:19歳から33歳まで14年間ですね。職人として4年働いたあと、営業事務の部署に移ったんですが、職人の給与ベースのままだったので、待遇はよかったです。

——なぜ、そんな条件のいい会社を辞めてしまったのでしょうか?

一つは、大学を出て就職した友人たちが自分の稼ぎに追いついてきたというのがあります。彼らには、負けたくなかった。もう一つは、職人から「このままでいいのだろうか?」と相談されたとき、営業として「大丈夫、頑張って」と言わざるを得なかったのが、嫌だったんです。本当は、その人が40代、50代になってもちゃんと仕事があるのかなんて、誰にもわからないのにね・・・。

——そこで会社を飛び出して、今の仲間たちと起業したと。そこから、どのような経緯で「ツクリンク」が生まれたのですか?

内山:IT業界には頭の良い人がいっぱいいます。その人たちに勝とうとするよりも、自分ができることを考えたほうがいいと思ったんです。そこで、自分が通ってきた建設・建築業界に向けたマッチングサイトはどうかなとメンバーに話したことがきっかけです。

——どんな反応でした?

内山:「よくわからないけど、他にないアイデアではあるよね」と。それで、とにかく作ることになりました。

株式会社ハンズシェア代表取締役・内山達雄(うちやま・たつお)

——具体的に「ツクリンク」は、どういうサービスですか?

内山:発注側の建設業者さんに「こういう案件がある」というのを提示いただいて、一方で受注する側の業者さんは「×日から〇人が空いている」という情報をあげてもらう。それをマッチングするサービスです。

——このサービスを使う人たちは、どのような恩恵を受けることになるのでしょう?

内山:建設業には、仕事の波があります。また、発注者と受注者のあいだにいくつもの会社が入っている重層下請構造もあります。「ツクリンク」を使っていただくことで、急な仕事量の変化への対応や、より良い建設会社との出会い、受注単価の向上などが可能になります。そういうところが変わればと思います。

——建設業界にサービスが広がる可能性をどうみていますか?

内山:スマートフォンの普及などもあり、建設業界のIT化は受け入れられやすくなったと感じています。まずは建設会社さんの利益率の最大化に注力してサービスを成長させていきますが、今後もいろいろな非効率を解決していけば喜んで受け入れてもらえると考えています。

——2020年の東京オリンピック・パラリンピック以降、建設業への需要が落ちていくのではという見方もあります。

内山:たしかに、そこを心配されている業者さんもいます。ただ、そういう時代でも「ツクリンク」が使われると考えています。発注者はより良い仕事をしてくれる受注者を探し、受注者は自分達の仕事を評価してくれる会社を常に探していることは変わりません。発注者と直接マッチングすることで、受注側は利益率を上げることできますし、地方から都市部へ出稼ぎのようなかたちで働くスタイルも可能になります。

——投資家のみなさんも、そうした考えに共感して出資していると思うのですが、期待を背負っていることについてどう感じていますか?

内山:精神的にキツいと思うこともあります。出資していただくことは、プレッシャーがかかります。失敗すれば、出資してもらった人につながる全員の信用を失うことになりますから。

——そのなかで気をつけていることがあれば、教えてください。

内山:決して見栄を張らないようにしています。出資していただいたお金で良い場所にオフィスを構えたり、福利厚生を充実させたりすることもできるでしょう。しかし、現段階ではやりません。使うべきところに、使っていくという姿勢でいますし、社員にもそのことを正直に伝えて理解してもらっています。

――これからのハンズシェアが求める人物像とは、どういうものでしょうか?

内山:エンジニアについては採用が難しい時代なので、経験が浅い人でも、うちに来てから育ってもらえればいいと考えています。私は決して「うちが一番いい会社」とは思っていません。むしろリスクのある状態かも知れない。それでもうちで働いてもらえるのであれば、一緒に幸せになりたいですね。

カメラマン: 加藤甫、 ライター: たちこぎライダー
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