「理想の職場なんてない。理想を持つから絶望する」
起業家・家入一真が明かすベンチャーの世界観

株式会社ハンズシェア

一風変わったサービスを立ち上げたり、都知事選に立候補したりと異彩を放つ起業家の家入一真氏。投資家でもある彼が出資した会社の一つに、建設業界向けマッチングサイト「ツクリンク」を運営する株式会社ハンズシェアがある。ツクリンクが生まれるきっかけも、元をたどれば家入氏にいきつくという。

今年6年目を迎えたハンズシェア社代表取締役・内山達雄氏と、数々のベンチャー立ち上げに携わってきた須田仁之氏、そして家入氏の3人が、創業前夜からこれまでを振り返るために集まった・・・と、そこへ人気店のラーメンを通販するサービス「宅麺.com」を運営するグルメイノベーション株式会社代表取締役の井上琢磨氏が乱入。せっかくなので加わってもらった。
家入一真(いえいり・かずま)
株式会社CAMPFIRE 代表取締役社長。ロリポップなどを運営する株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)の創業者で、2008年12月、JASDAQ市場に上場した。渋谷ON THE CORNERなどのカフェを運営するpartycompany、スタートアップへの投資・育成を行うpartyfactoryを設立。ものづくり集団Liverty、現代の駆け込み寺リバ邸といったシェアハウス立ち上げる。2011年1月クラウドファンディングCAMPFIREを起業した。
内山達雄(うちやま・たつお)
株式会社ハンズシェア代表取締役。大学中退後、とび職を経て、2012年にハンズシェアを共同創業。建設業における仕事の発注元と受注先をマッチングするサイト「ツクリンク」を運営している。2017年8月現在、サイトの会員数は1万6000社を超える。案件の紹介のほか、職人の求人情報も掲載しており、建設業界のスタートアップとして注目を集めている。
須田仁之(すだ・きみゆき)
株式会社ハンズシェア取締役。大学卒業後、1996年、株式会社イマジニア入社。1997年、株式会社JSKYB(現スカパーJSAT)総合企画室。1999年、株式会社デジタルクラブ(現ブロードメディア)企画室。ソフトバンクグループで「Yahoo!BB」事業立上げなどを経て、2002年株式会社アエリアに入社し、その後、取締役に就任した。2004年12月、株式会社アエリアの上場後、子会社ゲームポットの上場やM&A、グループ会社管理などに携わる。弁護士ドットコム株式会社など、複数のベンチャー企業・ビジネスで監査役やアドバイザーなどとして経営に携わっている。
井上琢磨(いのうえ・たくま)
グルメイノベーション株式会社代表取締役。1998年創業間もないサイバーエージェントにインターンを経て入社。2001年、アフィリエイト広告のASP、株式会社トラフィックゲートをサイバーエージェントの子会社として立ち上げた。2003年〜2010年まで営業担当の取締役として会社の成長に貢献。2010年4月、グルメイノベーション株式会社を創業。

「家入さんにはスルー力がある」

——そもそも、家入さんと須田さんはいつ出会ったんですか?

須田:家入さんがペパボ(株式会社GMOペパボ:以下ペパボ)を退任した直後ですね。

家入:今、自分のWikipediaで確かめますね。僕より詳しいんですよ、僕のこと。

一同:(笑)

家入:えーっと。ペパボを非常勤になるのは、2010年ですね。

須田:じゃあ、その頃ですね。そこに呼ばれたのが最初です。たしか、M&Aの話でした。「これから、いろんなところに投資して支援したいんですよ」と言ってましたね。

家入:へー。

須田:僕はM&Aのマッチングサイトやっていて、いろんなことやろうとしていた時期でした。

内山:家入さんに「CAMPFIRE」の共同創業者・石田光平君を紹介したのは、須田さんだって聞きました。

家入:そうですね。

須田:家入さんに案件を何社分か持って行ったんです。あやしいのも含めて。

家入:ほんとに?

須田:ええ。ちゃんと見送ってましたよ、あやしい案件は。

家入:そんなの紹介しないでよ(笑)。

須田:いい感じでスルーしてて、石田君の案件のときだけ「君、いいね」って。

家入:〇〇〇〇(伏せ字)は、ちょっと逃しちゃって・・・。

須田:それは逃していいやつです(笑)。家入さんは、スルー力がありますね。

——内山さんと須田さんは2007年に出会っていますね。

家入:えっ、僕と内山さんが出会うより古いんですか?

家入 一真(いえいり・かずま) 株式会社CAMPFIRE 代表取締役社長

須田:ええ。「サイトキャッチャー」というサイトの売買サイトがあるんですけど。

家入:おーっ。好きでよく見てましたよ。毎日見て「このサイトを買ったら儲かりそう」とかチェックしてました。

内山:そこに僕が、鳶(とび)の職人だったとき作ったサイトを出したんです。

家入:売れました?

内山:須田さんから連絡が来たんですよ。

家入:へーっ!

須田:携帯のアフィリエイトサイトで「月数十万利益出てます」みたいなのが出てて、問い合わせしたんですよね。そしたら、めっちゃ「現場の職人」みたいな人がやって来た。「こんな人、ほんとにいるんだ!」って。

内山:職人の格好のまま、髪もほぼ金髪で会いに行った気がします(笑)。

家入:殴り込みみたいだな。

須田:そうそう!

家入:で、そのサイトを買ったんですか?

須田:いえ、買えないですよ。だって個人でポチポチやってるだけのサイトで、内山さんがいないと回らない。

内山:その頃は全然知識がなくて、サイトを作るのも人力で、ひたすらコピペして作るみたいな。須田さんにそれを伝えたら、「そんな面倒くさいことやってらんない」って。

家入:それでよく月数十万円も利益がでましたね。

須田:そうですよね。もう気合いと根性。

内山:月100万円越えとかもありました。

家入:なのに、とび職人として現場でも働いていたんですか?

内山:はい。建設業に対して不安を抱いていました。そんなとき『SPA!』とかで「アフェリエイトが熱い!」みたいな記事をやっていて。

家入:あー、はいはい。

内山:「錬金術だ!」みたいに書いてあるのを鵜呑みにしてやってみたら、儲かった。それでも、だんだん売り上げが下降していくのを感じたんで、「あまり長くは続かないんだな」と思って売りに出しました。

家入:すごい!それ、正しいですね。普通の人だったら「これでもう一生食べていける」「不労所得ばんざい!」ってなっちゃうんですけどね。

内山:そうなんですかね。

家入:うん。仕事をやめてマカオとか行っちゃう(笑)。

内山:あまり難しいことをやってなかったんで、誰でも真似できるし、あまり良いものじゃないよなと思いました。それがきっかけに須田さんとお会いできて、そこからITに本当に興味を持ち始めたんです。

家入:いい話だ。

「家入さんにはなかなか連絡がとれない」

——その後、家入さんがツイッターで「春の起業祭り」という企画をされた。2012年のことです。

家入:あのツイート、最近やたらリツイートされています。

井上:最近になって(笑)。

家入:今やってるイベントだと勘違いされて「家入さん面白いことやってますね」なんて言われる(笑)。

内山:ITをやりたい思いがずっとあって、でもやり方がわからない。そんなとき、家入さんが「何も考えずに、お金も出さなくていいからとりあえず飛び込んでおいで」ってツイートされていた。

内山達雄(うちやま・たつお) 株式会社ハンズシェア代表取締役

家入:ほんとふざけてますよね。「リツイートしてくれた人の中から勝手に3名を選んで、あなたを代表にした会社を作ります」って。

井上:どのくらい応募があったんですか?

家入:1000人とか2000人とか。そこに内山さんが応募してくれていた。まあ落ちるわけですよね。当選した3人は、たまたま全員女性で、何回か会ったんですけど「私ちょっと無理です」となった。それで終わったと思いきや、「負け組の会」みたいなのが残ってたんだよね。

内山:そうです。Facebookに「負け組グループ」のコミュニティができた。

家入:要は「春の起業祭り」から漏れた人たちが、「ムカつくから俺たちで何かやっていつか見返してやろうぜ」というグループができたんですよね。そこでメンバーが集まった。

内山:そうです。まあ、やる気のある人たちしか集まっていないんで、「会いましょう」ってなって、会ったその日のうちに「会社作って家入さんに責任を取ってもらおう」みたいな話になりました。

家入:「子ども、できちゃった・・・名前を付けてよ」みたいな。

内山:そんな感じです(笑)。家入さんのイベントに行って、家入さんが出てくるのを待って、「こういう経緯でやりましたので、責任取ってください」って声をかけました。

家入:面白いなと思った。

内山:「いいね!」みたいな反応いただきましたね。

家入:それでも、お互いに素性もわからない状態で出会って、まだ会社が続いてるってすごくないですか?

内山:不思議ですね。

家入:最近、よく「カルチャーフィット(企業文化が合う)」って言ってますけど、カルチャーもクソもないじゃないですか。

内山:ないですね。

家入:ほら、お見合いのほうが離婚率が低いらしんですよ。自由恋愛だと「もっといい相手がいるかも知れない」って目移りしちゃう。お見合いだと「この人のこんなところいいかも」って加点方式で見るんです。少しずつ愛が育まれていく感じ。

内山:その後、某ベンチャーキャピタルのスタートアップ支援プログラムの募集を見つけて、応募したら通ったんです。それで家入さんに相談しに行ったら、ちょうどそこにいた(株式会社美人時計ファウンダーの)早剛史さんを紹介していただいた。そこから家入さんが「個人の投資家を紹介してあげるね」って、早さんから(現在、監査役の)三根一仁さんとかに話がいって。

須田:定番だね。あの時代の。

井上:うちもそうでしたから(笑)。

家入:同じパターンだ(笑)。それでベンチャーキャピタルから、出資してもらったんだっけ?

内山:いえ、結局受けなくて、紹介いただいた個人の投資家さんやファンドさんから1200万円くらいお金が集まったんです。

家入:すごいじゃない。

須田:今、Facebookのメッセージを見返していたら、2012年4月に内山さんから「ちょっと聞きたいんですが、家入さんってどんな人ですか?」ってありますね。

須田仁之(すだ・きみゆき)株式会社ハンズシェア取締役

家入:あ、面白い。それ。

須田:「先週、Facebookから、家入さんにビジネスモデル的な提案を送ってみたんです。そしたら、『それやろうよ』って返信が来たんです。その後、「会いましょう」ってメッセージがきたんですが、『いつならいいですか?』って返信したら、連絡がこなくなりました」。毎回のパターンですね。

家入:ありがち。

須田:「それって忙しいだけですかね?それとも気まぐれに返信くれただけですかね?ビジネスモデルだけを純粋に評価してもらいたかったので、家入さんには須田さんと知り合いであることは伝えていないので、直接聞かないでくださいね」

家入:さすがですね。

内山:そこで色がつくのがイヤだったんです。

須田:僕の返信は「家入さんはメールの返信はくれますが、アポを取るのはそれなりに大変で、そういう人たくさんいますよ。性格なのか自分なりに優先度を付けてやっているのかわかりませんが、根気よくやるしかないですね」。すると、「そうですか。根気よくアポとってみます。ありがとうございます」と。

家入:面白い。

須田:その後、「『家入秘書室』っていうのを見つけて、そっちにも送りました」って。

家入:あ、それ自分で作りました。googleカレンダーを公開して、好きなところに入れてねっていう。

井上:あったあった!

須田:(内山さんは)「それもやってみたけどダメでした」と。それですごいのが「なんとしてもアポ取り付けてみせまーす!!!!」って。

家入:いいですね。1回会えなかったくらいで諦めてもらいたくないんですよ。これは本当に極端な話、100回電話してくれているけど1回も会えていない人もいれば、たまたま電話してくれたときに、僕が「誰かと話したいな」と思っていて、知らない番号でも出ちゃったり。そのまま盛り上がって・・・みたいなのもあるし。そういうもんですよね。最初のアイデアはステッカーの売買ですか?

内山:サービスとしてやったのは、それが最初ですね。「Wizzm(ウィズム)」です。

家入:そのステッカーの売買サービスで調達したんですか?

内山:いえ、ステッカーはダメで。ベンチャーキャピタルのコンペのために「新しいのを考えよう」ってなって。

家入:ステッカーで調達じゃなかったんだ。

内山:ステッカーは須田さんにいろんな会社を紹介してもらったんですが・・・。

須田:2012年8月、内山さんと一緒に営業に行って、「株式会社アカツキ」の塩田(元規)さんにボロクソ言われていますね。

内山:そこで「このサービスはダメだ」と察知しました。

須田:「何このアポ?」みたいな感じでしたね。「勘弁してくださいよ。こっちは真剣に事業やってるのに」という顔をされて。まあ、(アカツキは)今となっては時価総額1000億円の規模ですからね。

内山:そうですね。

家入:そうやって誰かにキツく言われたって聞いていたら、「死ぬ気でステッカーをやれ」「ステッカーで見返そう」と言ってたかも知れない。まあ、僕もステッカー事業はどうかなとは思ったけど。

一同:(笑)

家入:「Wizzm」って、まだあります?あ、ありますね。すごい。「顔面広告」のステッカーがある。「ぼくのおつかい」も入ってる!懐かしい。今見ると、けっこう面白い。「サポーターになる」って、早すぎたんじゃないですか?今見るとめっちゃいい気がする。

内山:ステッカーって言ってるからいけないのかも知れませんね。

家入:「買う」とか「貼る」とかで応援するってことですもんね。

内山:「CAMPFIRE』のステッカー版で、超少額というだけなんですけど。

家入:これ、いけますよ。ステッカーをICO(Initial Coin Offering:仮想通貨経済)みたいな感じにして。トークンをステッカーにするということで、ステッカーを発行する。来たな。

須田:5年早すぎたか。

家入:ISO(Initial Sticker Offering)にして。ステッカーを発行して20億円集めましょう。

内山:家入さんが言うとできそうだからなぁ(笑)。でも、ベンチャーキャピタルのコンペのときには「これじゃさすがに無理だろ」となって、僕が知っているのが建設業界だけだったので「ツクリンク」を作りました。たしか1日で考えてるんですよね。前日に他のメンバーとカラオケボックスに行って、徹夜で考えました。

家入:歌わずに?

内山:歌わずに。

家入:1曲も?

内山:1曲も(笑)。

須田:そこは、いいじゃないですか(笑)。

内山:プレゼン前は死にそうだった記憶がありますね。プレゼンや出資は初めてでした。

須田:基本的に何もわかってなかったもんね。

内山:ベンチャーキャピタルから「建設業界向けのは面白そうだけど、難しそうだよね」って言われた記憶があります。

内山:でも、結局OKしてもらえたんで。だけど、うちが断っちゃって申し訳なかったです。

家入:僕は、どのタイミングで「こういうことやっていきます」って話を聞いたのか覚えてない。

内山:ベンチャーキャピタルのコンペが通ったのを、家入さんに報告しに行ったんですよ。「どういうことやるの?」と聞かれたので、説明をしたら「ほかの人を紹介するね」って。

須田:へー。ちゃんと会えたんですね。会って話せたんですね。

家入:すごく面白いと思ったし、ストーリーがあるから全然いいと思ったんだけど、ビジネス面でのアドバイスが全然できそうになかったから。早さんはそういうところで知見がありそうだったから、つなぎたかったんだよね。

須田:なるほど。僕のところには「コンペが通りました」って連絡が来てますね。「建設業界のIT化にしました」って。それには「いいすね!」と返しています。

家入:すごい。僕も今、当時のメッセージのやり取りを読み返してるんですけど、内山さんには「お」しか返事してないですね。「お」「お」って。

井上:それでもあきらめずに、メッセージを送り続けてる(笑)。

須田:諦めないですね(笑)。

家入:「絶版になった商品を復活させるってどうですかね?」って連絡が来ていたり。いろいろ模索してたんだなぁ。

内山:そうですね。アイデアは出してました。

須田:諦めない精神は重要ですね。

家入:大事ですよ。出し続けるってことは。

内山:ほんとだ。僕、めっちゃメッセージを送ってる。ストーカーみたいですね。

家入:7回連絡があって、僕が1回返事してる感じですね。

内山:3カ月後くらいにようやく家入さんに会えてる。

家入:そこで「一緒に暴れよう!」って言ってるんですね、僕。急に(笑)。

内山:家入さんが出るイベントに突撃して、「会えてよかったです」ってメッセしたら、「こっちも会えてよかったよ」みたいに連絡くれました。それで「事務所においでよ」って言ってくれて、「いいんですか?」って。そこからまた数カ月間連絡が取れなくなった後、会えたんです。

家入「語れないサービスはダメ」

——内山さんは家入さんと連絡が取れず、心が折れるってことはなかったんですか?

内山:ありませんでした。返信があると喜んでました。だって、有名人じゃないですか。

家入:いやいや。

井上:「お」だけでも?

内山:はい(笑)。ほら(と、画面を見せて)僕の長文メッセージに対して「それやろうよ」と言ったきり、返信がない。

井上:すごい!

須田:うわーっ、すげえ!うわー。こうなっても途中で諦めたらダメなんですね。

内山:結果、なんとか会えてるわけですから。

井上:「ツクリンク」は、営業をかけて登録者を集めてるの?

須田:あ、話がもとに戻った(笑)。

内山:今は営業をしていなくて、自然流入と口コミですね。

井上:僕、リフォームを2回やったことがあって、リフォームの相見積もりサイトってあるじゃないですか。複数のリフォーム屋さんが見積りを出してくれるんですが、みんなアウトプットの形が違うんですよ。フォーマットが違う。「これ、IT化できるよね」って考えたことがあるんです。でも、営業が超めんどくさそうだなと思ってやめたんだけど、営業せずに集まってるってすごいなぁ。

内山:最初の頃は、数十社集まっただけで喜んでましたよ。2015年で1000社いってないですもんね、たぶん。

家入:1000社が少ないかどうかすらわからないもん、僕らは。

須田:今、1万6000社とかでしょ?

家入:全体でいうと何社くらいあるの?

内山:100万社くらいあります。1%いったくらいですかね。

家入:これはもう、勝ちでしょう。

内山:家入さんはよくあの時点で出資を決めたなって。

家入:結局、出資をするときって何をやるかはどうでもいいんですよ。もちろんプレゼンを受けたりはするけど、だいたいわからないですもん。じゃあ何を見てお金を出すかっていうと、この人がどういう人でどういうチームを作っていてというところでしか判断しようがなくって。再現性なんてないじゃないですか。

須田:そうですね。

家入:ちゃんとデューディリジェンス(投資の際におこなわれる企業の資産価値の調査)をやったからって確度が上がるかっていうと・・・。

須田:わかんないですもんね。

家入:起業家の時間を奪っちゃうのは僕の仕事じゃないんで。僕らがお金を出すタイミングというのは、ほとんど何も見えてない状態と言うと相手に失礼だけど、人を信じるしかない。そういう意味で、「ツクリンク」はステッカーの売買サービスよりいいと思ったんですよね。

須田:同じです(笑)。

家入:ステッカーが悪いというんじゃなくて、語れるじゃないですか。「なぜここに行き着いたか」を。「語れないサービスはダメ」というのが僕の持論。鶴岡(裕太)君が「BASE」を作ったときも、「お母さんのために作った」という話があって、実際にそうなんだけど、「そのエピソードは絶対に知ってもらった方がいい」っていつも言っています。

一同:へーっ。

家入:結局、「BASE」というサービスができただけじゃ、もはやシェアしないですよ。「便利だね」くらいしかない。だけど「大分に住むお母さんがネットショップをやりたいけど、既存の大手ECモールは難しいという。そのお母さんのために、誰でも簡単にネットショップが作成できる『BASE』を作りました」っていうと、みんな共感してシェアしまくるんですよ。

内山:たしかにそういうのはあるかもしれません。

家入:僕、もうしつこいくらいに言いましたから。裏側に物語のあるものしか選ばれなくなっているんです。そういう意味でいうと、「ツクリンク」はストーリーがあるじゃないですか。

須田:なるほどね。

家入:たとえば「僕、昔からステッカーが好きで」という話があれば、僕も「ステッカーのサービス、めっちゃいいじゃん」って言ってたと思うんですよ。「ステッカーで上場しようよ!」って言ったと思うんですよね。

須田:当時、「IT×建築」なんてやってる人がいなかったですからね。いま「BtoB」はある程度成熟してるっていうか、「BtoB」でIT化されていないところを探す。たとえば「ラクスル」とかもそうかも知れないし、どこかの業界のIT化っていうのがひとつテーマではあるので。

それは業界の中の人でしか絶対にできないこと。ぽっと出の人が「建設業界のアプリを作ってます」とか言っても、絶対に建設業界の人たちの気持ちはわからない。それをわかってる人がいるというのは、いいなと思いましたね。これはやるべきだなと。

「起業する人は、社会に適合できなかった人たち」

——いま皆さんから見て、ハンズシェアの成長をどう思われますか。

家入:僕、内山さんから「来てください」って連絡があっても、だいたい行かないんですよ。

内山:(招待したのは)株主総会です。

一同:(笑)

家入:社員は、何人いるんですか?

内山:12名です。

須田:今、必要としているのは幹部、役員候補ですかね。

内山:数字に強い人がほしいです。

井上:うち「Wantedly」に求人を出したんですが、意外とハイスペックな人がちょいちょい来るんですよね。御社のサービス、ユニークじゃないですか。

内山:出したんですよ。出したんですけど、誰も来なかったんです。

井上:本当?それはアピールの仕方が・・・。

須田:そうですね。メディアに出ていないから、いまいちその良さが伝わってないというか。

内山:建設業って近く感じられないんだと思います。

須田:「業界×IT」みたいな感じで説明していくしか。

井上:このサービスのゴールはどこにあるんですか?

内山:やりたいことは山ほどあるんです。ゴールとしては、職人さん個人がちゃんと稼げて、建設業で働きたいという人を増やすことです。

まだ社会から取り残されてる感じがあるんですよ。職人さんって週休2日ないとか、残業手当でないのが当たり前だったり。技術を身につけるまですごく時間がかかるにも関わらず給料がそれほど高くない。身体を壊すことを考えると、40代50代までという可能性があるのに、そのあと保障されない部分がある。まずは社会に利益をというところで考えています。

井上:うちの場合、求人する際はなるべくIT寄りに説明しようと思って、「クラウドキッチン」とか「グリッドコンピューティング」にならって「グリッドキッチン」とかよくわかんない言葉を使ったりしました。

井上琢磨(いのうえ・たくま) グルメイノベーション株式会社代表取締役

最近はラーメンのレシピのことを「IP」と呼んで、「日本のラーメンIPを世界にどう出していくか」といったことを話すようにしていたりとか。「Wantedly」にもそういうことが書いてあるんです。そうすると、ついうっかり勘違いしていい人が来たりするんですよ。

内山:ちなみに、家入さんにもキャッチフレーズについて相談したことがあります。

家入:僕、なんて返事してるんですか?いいこと書いてるんだろうな。

内山:「キャッチコピーとかビジョンとか苦手なんで助けてください」って書いたら、「そこ得意」って返ってきて、「ハンズシェアは人を作る会社なんだろうなと思う。そこからブレイクダウンしていきましょう」と。

家入:「抽象度を上げていきましょう」みたいな感じなのかな。

内山:で、「壁打ち相手になるよ」って言われて、そこから返事がない。

家入:壁がない。

一同:(笑)

家入:起業する人たちって、社会に適合できなかった人たちだと思うんですよ。社会に適合できなかった分、自分に生きやすい社会を、社会を自分に寄せて作り変えようとする人たちだと思うんです。

だから偉いとか、そういう話ではなくて、ある種、エゴというか勝手な行為だと思うんですが、要は社会を作り変えることで、自分もしくは自分みたいな人間が生きやすくなればいいなと思っているはず。じゃあ、どういう世界になると自分がなんとかしてあげたい人たちが生きやすくなるのかというところをメッセージにすればいいんじゃないかなと。

須田:うん。

家入:さっき内山さんがしゃべっていた話の中にもう入っていると思うし、それをもうちょっと洗練させていくだけの作業なんだろうと思います。

須田:そうですね。

井上:今「Wantedly」でハンズシェアのページを見てたんですけど、デザインはすごくいい気がします。認知されてないだけな気がしますけどね。

家入:社名とサービス名が違うわけじゃないですか。ハンズシェアとしてのメッセージがあって、それを実現するための一つが「ツクリンク」。今後、ほかのブランドというかサービスができていくのかもしれないし。

内山:最初は「何かやりたい」から始まってるじゃないですか。その中でできることが「ツクリンク」だった。ビジョンもなくて・・・。

家入:だいたいがそうですよ。理由なんて後付けだったり。何でもいいと思った中でも、これを選んだという「何か」があるはずだし、何も考えてなかったわけでは絶対ないと思いますね。

須田:リクルーティング的には、「建設業」ってあまり言わないほうがいいのかも知れませんね。建設業を知らない人に響かないじゃないですか。たとえば「ラクスル」って、印刷業をやっていた人が働く会社でもないですし。業界自体の大きな流れを変えるっていうメッセージでいいんじゃないかなって。

家入:いいですね。「ラクスル」のサイトが参考になるかも。僕は「他社を調べる」ってことをけっこうやるんですよ。絶対に大事だと思っていて。「ラクスル」は「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というメッセージを出している。

須田:はいはい。

内山:(サイトに)一切「印刷」って出てこない。

須田:「リアル×IT」って言ってますね。新しい社会インフラ・・・あ、「社会インフラ」とかよくないですか?

井上:「ラクスル」の採用サイト、印刷とは全然関係ないですもんね。

家入:見えてきた!

須田:「建設業界最大規模」とか言い過ぎなのかも知れませんね。「ラクスル」を参考にしちゃいましょう(笑)。

家入:「20世紀のサービスが、21世紀型にアップグレードされることで、生産性が大幅に改善される」。結構使えますよね。そのままだとダメですけど。

須田:「産業構造を変えて世の中に大きなインパクトを与えていきたい」

井上:汎用性の高いメッセージだなぁ。

家入:こういうのを並べていくと、「ちょっと違うんだよな」「良いこと言い過ぎている」っていうのが出てくる。それが、ハンズシェアのエッセンスになると思うんですよ。

須田:まずは間口を広げないと。「ラクスル」も同じだと思いますよ。間口を広げて優秀な人を集めている。

内山:(求人サイトで)嘘をついて来てもらっても、失礼じゃないですか。

家入:嘘じゃないんだよね。採用に限らず、投資もそうだし、人との出会いってそういうもんなんだけど、数多く会う中で、たまたまやろうとしていることが一致して盛りあがってというパターンもあれば、1週間ずれただけでこっちのテンションも違っていて「残念でした」みたいなこともある。

いろんな部分で偶然性に左右されるところがすごく大きい。その中でも1人でも多く「こいつと出会えてよかった」と思う人との出会いをどう作るかというと、言葉が悪いけど、1人でも多く引っかかるように網みたいなものを張るしかなくて。

須田:そうですね。

家入:須田さんもそうだと思うんだけど、よく「いい大学生が揃ってますね」とか言われたりするわけ。でも、その何百倍も別になんともならなかった大学生と会ってる。その一部がうまくいって「須田さんのおかげです。家入さんのおかげです」って言ってくれてるだけ。

何百倍もの人に会ったり、悩み相談に乗ったり。そういうのをすっ飛ばして、「いい人ばかり周りにいますね」って言われるけど、いやいやいやって。もちろん時間は有限なので、無駄にするわけにはいかないですが、1人でも多く会うというのが一番いい。

須田:「間口を広めましょう」ってことですよね。内山さんはちょっと控えめなんですよ。

家入:なんで控えめなんですか?

内山:あまり好きじゃないですんよ、前に出ることが。

井上:でも、すごいじゃないですか、やってることは。

内山:僕が前に出ても建設業の人たちに届かないなってイメージがあって。

須田:内山さんの気持ちはわからないではないというか、それはそれでいいとこなんだよなぁ。あまり「ウェイウェイ」してるのもね。

内山:もっと適した人がいれば、その人にやってもらってもいいんです。

井上:採用という観点でいくと、どう最適化するかっていうのは難しいですけどね。

家入:会社の経営者も「自分を出したくないよね」というのがいいパターンがある一方で、そこはかなぐり捨てるフェーズなのかもっていう見方もあるし。

内山:僕は、どっちかというと「目立たなくてもいいや」って感覚なんです。必要ならやらなければならなくて、そこは仕事なんでやりますけども。

須田:業界に対して前に出る必要はないかも知れないですけど、採用面では出る必要があるかも知れませんね。

「ぬるま湯になる」ことに危機感がある人は、ベンチャーに向いている

——今ハンズシェアに入ると、どういう「ワクワク」がありますか?

内山:難しい質問ですね。

家入:いわばこれからを一緒に作っていく仲間だもんね。創業メンバーみたいなものだよ。

内山:建設業って、遠いけど近いんです。家とかオフィスとか全部含めて関わっていて、その業界をよくすれば、自分たちの生活に返ってくるはずです。逆に、その業界が落ちていくとみんな不幸になる。だから、自分たちの生活を自分の力で変えられるというワクワクがある。そういう大きなインパクトを与えることに楽しみを感じられる人に来てほしいですね。

家入:いいじゃないですか。

——やっぱり野心のある人のほうがいいですか?

須田:「大船に乗ろう」系の野心のある人は得てしてよくないもんなぁ(笑)。自分の力でやってやるという人がいいですね。「追い込まれてる」みたいな人のほうがいいんですよね。

——ベンチャーを見ていると、最初期からいるメンバーがなんとなく偉くなって、人が増えてくると後から来た人とぶつかるというパターンがありますが、皆さんはどうやって乗り越えてきたんですか?

家入:それ、めっちゃありますね。

須田:めっちゃあります。

家入:組織ってフェーズによって、たとえばCOOみたいな存在も、30人くらいまでのCOOと、社員150人のCOOとって違うじゃないですか。だから、自ずと変わってくるんだと思います。変わったほうがよいという話でもないと思うんですが。

須田:そのときの実力ですよね。実力のある人が入ってきたんだったら、上にせざるを得ない。みんなの納得感を考えると。

家入:意外と後から入ってくる人もプレッシャーがめっちゃあると思いますよ。

須田:うんうん。

家入:ちゃんと結果を出して、有無を言わせなくなるまでならないと。それは最初に言いますけどね。

内山:それでいうと、僕も代表じゃなかったですからね。

家入:あ、そうだ。あれ、いつから?

内山:2014年ぐらいまでは代表じゃなかったんです。さっきの「あまり目立ちたくない」というのにもつながるんですけど。裏方で頑張ってもいいかなと思ってたんですが、自分がやるしかないかという気がしたんで。出資していただいた分の責任を果たすべく。

家入:内山さんは、ちゃんとしたいい人なんですね。

須田:ねー。外から見てたらわかんないですもんね。

井上:裏方で頑張ろうと思っていたけど、お金出してもらったから責任を果たそうということですもんね。イヤだったらイヤのまま、前に出ないという選択肢もありますしね。

——ベンチャーに転職することって、まだまだ一般的ではないと思うんですが、ベンチャーに行ったほうが幸せな人って、どんな人でしょうか。

須田:安定より成長を求める人は合っていると思いますけどね。「早く成長したい」「早く経験したい」という人。「このままここにいていいんだろうか?ずっとここにいるとぬるま湯になっちゃうけど・・・」みたいな思いを持っている人。課長や部長を見て、「あれになっちゃうんだ。あれじゃやばいな」という人は合ってると思います。

井上:規模にもよると思っていて、10人の会社が100人になるときって、個人も成長しないと付いていけいない。そういう環境に身を置きたい人ですね。

家入:理想の職場なんてないですからね。理想を持つから、絶望する。自分の居場所ってのは結局、自分で作らなきゃいけなくて。大企業の中だからできることだとか、大企業の中でも同僚を喜ばせるところから頑張る人もいれば、ベンチャーでダイレクトにできることもあるかもしれない。

須田:うん。

家入:まあ、能動的に動ける人はベンチャーに向いていますよね。ベンチャーだからっていうのを免罪符とか言いわけにするつもりはないけど、残業制度とか仕組みがないところがほとんどだから。仕組みがないからこそ「一緒に作っていきましょう」という人が向いていて、「あれないんですか?」「これないんですか?」って言っちゃうタイプは、たぶん難しい。

須田:それは合わないですね。ルールが嫌いな人とか向いているかも知れないですね。ルールがないほうがやりやすいという人。

家入:まあ、ベンチャーに行ったら、一生ベンチャーにいるってわけでもなくて、大企業に行ったら一生大企業ってわけでもない。面接で何回も転職している人がいると、「転職が多いんですけど」って申しわけなさそうに来るんですが、僕は全然問題ないと思っています。

もちろん、やめ方にもよるんですけど、自分の居場所を探そうとして、能動的に飛び出していっている人って逆にすごいんですよ。飛び出るのも勇気がいるんで。「むしろすごいですねー」みたいな。「ここが最後の場所になったらいいね」という話をするし、転職の回数が多いことは全然悪いことではない。今悩んでいる人も、ベンチャーに興味があってベンチャーでこういうことをやってみたいというのがあれば、飛び込んでみたらいいんですよ。

カメラマン: 加藤甫、 ライター: たちこぎライダー
株式会社ハンズシェアに興味をもった、
エンジニア・デザイナー・ディレクター・グロースハッカーはこちらから 今すぐエントリー

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